仙台高等裁判所 昭和29年(う)516号 判決
次に、職権を以て調査するに、原判決は原判示無謀操縦の点につき道路交通取締法第七条第一項第二項第二号第九条第一項を適用し、これと業務上過失傷害とを併合罪として処断している。即ち、原判決は無免許運転だけを無謀操縦とみたのであつて、それのみの限りにおいては業務上過失傷害と併合罪の関係にあるものといえる。しかし、原判決は無免許運転のほか、飲酒酩酊による運転、及び警笛も鳴らさず速力も減じなかつたことをも判示している(起訴状も同様であつて、無謀操縦を無免許運転のみに限定していない)のであつて、前者は道路交通取締法第七条第一項第二項第三号に違反し、後者は同法条第二項第四号の「ハンドルその他の装置による安全な操縦に必要な操作を怠つて車を操縦すること」に該当するものというべく、同法条第一項第二項第四号に違反する。そして、これらは包括して無謀操縦の一罪となる。ところで、右警笛も鳴らさず速力も減じなかつたことは本件業務上過失傷害罪の過失の一内容をなすものであるから、包括した無謀操縦全体が業務上過失傷害罪と観念的競合の関係にあるものというべきである。されば、原判決は畢竟法律の解釈適用を誤り乃至はその適用を遺脱したもので、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決はこの点においても破棄を免れない。
(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)